緋色のことば

私的なことばを書き連ねたり、SFを書いたりします。

GACKT「GACKTの勝ち方」

 

GACKTの勝ち方

GACKTの勝ち方

  • 作者:GACKT
  • 出版社/メーカー: サンクチュアリ出版
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 今年最初の読書は、いわゆる「ビジネスマン向け」とも言えるこちらの本。ビジネス書籍は敬遠しがちな僕だけれど、ミュージシャンであるとともに実業家でもあるGACKTさんについては著名ながらも謎の部分が多く、「どういう人なんだろうか」という興味本位で読み進めてみた次第だ。おかげで、その生き様に生々しく触れるうちに、ふつふつと気力がみなぎってくるくらいの刺激をもらえた。

読み終えた直後の今、シンプルな感想として言えるのは、自分の生き様を貫くために必要な「覚悟」を持つことがどれだけ大事か、という事実を改めて諭されたということだ。そうして、覚悟を持ち、自分の理想を貫くためにはお金も必要だ。その点も含めて、単なる夢想では終わらせない、具体的な行動あっての覚悟を見せつけられるところが良い。

GACKTとしての自分はこれだけのことをやり抜いているが、貴様はどうだ? という問いかけを常にされながらの読書は、とても刺激的だった。最近では「それなりの自信」を得た気になっている自分の甘さを思い知らされている。

書かれている具体例の多くは、「GACKTだからできた」と言えるのは確かだけれど、そういうことは問題じゃない。これは「GACKTの立場だからこれだけの覚悟を持って貫いてきた」というメッセージを投げかけているのであり、別に実業家やベンチャー志望じゃなく、一般サラリーマンはもちろん、漁師でも八百屋さんでもいい。まだ社会に出ていない中高生であってもかまわない。大事なのは、その人が持つ資質と環境の中で「どれだけの覚悟を持つか」ということだからだ。

当書籍は空白行が多めに取られ、フォントサイズやボールド指定もランダムに使われているから、ネットのニュースを読むかのごとく、すいすいと読める。人によっては文章量の少なさを指摘する向きもあるかもしれないが、書かれている「ことば」の密度が高いから、これで良い。むしろ、このスタイルこそがベストだ。

印象深い言葉の多くが書籍の核心を成しているため、下手に引用すると「ネタバレ」ともなってしまう危険があるのだけれど、僕自身が感じ入った言葉を一つだけ引用しておきたい。

思考というのは、日々の生き方で9割が構築される。

ネタバレしない範囲内で言うと、まずは行動あってこそと何度も言っているGACKTさんの考えをシンプルにまとめたことばだと思う。補足として、「残りの1割は、偶然の出逢いや、読んだ本などから」とも書かれているから分かりやすい。友人が少なく、書籍を中心とした情報をメインとしていた僕は、長らく、この点を分かっていなかった。

まずは行動あってこそだということを、オッサンになってからの僕は痛いくらい身に染みている。私的な話で申し訳ないが、僕は典型的な社会不適合者だ。学校を出てからも職を転々とし、あげくの果てに精神を病んで社会をドロップアウトした。何年も引きこもった。醜いままのデブ男となり、髭もちゃんと剃らなくなった。数少ない友人知人が去って行った。初めて僕を見る人の多くが侮蔑の表情を向けた。たまに街を歩いても、通りすがる人が避けていく。悔しくても、何も出来ない。体力も無ければ、頭も働かないからだ。自分の人生は終わったと嘆いていた。

そんな僕が変われたのは、やはり行動だった。あることがきっかけとなり、メンタルクリニックへの通院を止めた。(※あんな所は行くものじゃない)そうして、現実逃避するように飲んでいた酒も止めた。信頼出来る整体師の指導で腰痛を治し、ランニングを日課とするようになった。体がみるみるうちに引き締まり、健康診断でも問題は無くなった。肉体が健康になると頭も働く。おかげで僕は、今の社会で生きていく力があると判断し、具体的に行動できるようになった。

書き出すと長くなるのでここまでにしておくけれど、行動がいかに大事かってことだ。したたかな考えは必要だけど、やらないことには始まらない。これは間違いない。

とは言え、僕はGACKTさんのような「覚悟」を持てない。僕は弱い。自分でもよく分かっている。でも、「行動しない」ことによるデメリットを嫌と言うほど知っている。かつての自分には戻りたくない。かなり後ろ向きなモチベーションだけれど、それでもいい。何もしないより、心が折れない範囲での「小さいけれど前向きな行動」を継続することには意味があると知っているからだ。

ようし、今年もやるぞ! と気合いを入れつつ、日々やるべきことをきっちりとこなしていこう。さて、そろそろランニングの時間だ。